スレッド一覧

  1. 下目黒の恐怖の精神虐待魔について語るスレ(6)
スレッド一覧(全1)  他のスレッドを探す 

*掲示板をお持ちでない方へ、まずは掲示板を作成しましょう。無料掲示板作成

新着順:126/881 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

 「部落の差別、らいの差別 ~福本まり子『悲濤』を読んで~」 しまだ ひとし>(その2)=論考の前半です。       

 投稿者:  滝尾 英二メール  投稿日:2008年 8月 7日(木)12時10分53秒
  通報
 
<「部落の差別、らいの差別 ~福本まり子『悲濤』を読んで~」 しまだ ひとし>(その2)=論考の前半です。

       (らい詩人集団発行『らい』第七号(1966年7月発行)16~18ページより)


                  人権図書館・広島青丘文庫  主宰 滝尾英二
                         ‘08年8月7日(木曜日)12:08

 人生には、あるしめくくりをせまられるときがある――その人の意思にも、生きてきた年月の長短にも関係なく、それをせまられるときがある。

 そめくくり――というのは、そいつを片付けないと、その人の明日がはじまらないなにか――とでもいつたらいいでしょうか。福本まり子さんは十代でそれにつきまとわれた。『悲濤』を読んで、私はまず、少女からあまい夢のひとときもうばつていく、私たちのこの社会を憎む。

 私たちの社会は、愛する(と思つている)人が存在することが、他のなににもまして生きていくささえになる年頃の娘から、そのかけがえのないものをうばつていく。それはなぜかけがえがないか、――愛する者の存在は真実ではないこともありうるし、真実であることを確かめえないこともありうるのに、それがなぜかけがえがないか。

 それは、愛しようとしたということの確かさのなかに――よりよく生きようとしたことの偽わりのなかに、人間のしるしがあるからです。まだ固い蕾のような、孤立したひとつの心の動きのなかには、かぞえれば未熟なものはいくらでもあるでしょうが、それは、そこにそだっていつた人間の存在のたしかさを、消すことはできないのです。このたしかさこそ、「人間の敵」たちにとつて我慢のならないものであり、できるなら若い芽のうちに、傷つけ、枯らせたいものなのです。


 『悲濤』を読んで、私は正直なところ、はじめは福本まり子さんの苦しみを、私たちらくい患者の苦しみにくらべて、ぜいたくなという気持をうち消せませませんでした。彼女には理解のある尊敬できる父親があり、愛情をそそげる家族があり、なやみを話しあえる友人があり、健全な手や足があり、仕事があります。それらは、私たちらい患者の多くの者にとって、ほとんどうばわれているものなのです。

 そうは思いながら私は、私たちがうばわれているものを持ちあわせながら、そうであるのに、若く、早く、彼女は死んでいつたというその事実が、読み終つた本を閉じる手を重くするのです。差別――同じ苦しみを苦しんでいるという、その同じとはなになのか。


 私たちの生きている社会――この日本には、いまもさまざまな差別があります。身分による、人種による、思想による、病気や障害による、性による、古くからのものや、比較的新しいものや‥‥それからさまざまな差別のなかでも、本人の意思のとどかないところに根ざせさせられる差別ほど、やりきれないものはないといえます。生んでくれなければよかつたのにといつてみたところで、もう生まれているのです。

 しかし、差別する側からいえば、それこそ―本人の意思のとどかないところに根ざせさせられる差別こそ、快心のものでしょう。手のとどくところにあるものが原因になつているかぎり、差別される者は必死にそれをとりのぞく努力をするだろうからです。その点では、私たちらい患者の差別には、ハケグチがのこされているともいえます。(さしあたり現実的かどうかは別として)。「もつと医学が発達して、さらによい薬や、手術ができるようになれば」とか、「医者はなにをぼやぼやしとる」とか。


 ところが、生れてきたことだけが、差別の原因であるばあい、それをどこにもつていつたらよいか。部落差別の問題は、体のどこにもさがしたつて差違は発見できないだけに、差別としては、ずづと露骨で、つらいことになる――そう思つたとき、私は差別の問題を――私たちじしん、つよい差別、偏見に苦しめられていると感じながら――ぼんやりとしか考えていないところがまだ沢山あることを知らされるのです。


 差別の論理からいえば、差別の理由になしうるものが、変更不可なものほど完璧なのです。そうでないものは差別としては長つづきしないのです。だから差別には出生に起因するもの、本人の意思では左右できないものが多いわけですし――部落、朝鮮人、女――、病気では、治りにくい、醜くいものがえらばれるのです。(この稿は前半部分です。=滝尾)
 
》記事一覧表示

新着順:126/881 《前のページ | 次のページ》
/881