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 らい詩人集団発行『らい』の同人・近藤宏一さんの詩を五篇 ~島田 等さんを偲んで(12)~            (滝尾)    

 投稿者:  滝尾 英二メール  投稿日:2008年 8月31日(日)09時56分16秒
  通報 編集済
 

らい詩人集団発行『らい』の同人・近藤宏一さんの詩を五篇 ~島田 等さんを偲んで(12)~


                    人権図書館・広島青丘文庫  滝尾英二

                      ‘08年8月31日(日曜日) 10:00


(1)「僕のお父さん」、高一 近藤宏一(長島愛生園慰安会発行『愛生』第九巻・第十号、37ページ、1939年10月発刊)

  お父さんは
  オートバイの運転手
  毎日大阪市内を走らせて
  働いてい居られる
  お父さん
  仕事に出られる時
  お母さんは心配さうに言うはれる
  「気をつけて行つていらつしやい」
  その度に「大丈夫だ」と
  力んで言ふお父さん
  仕事服は何時も油のにほひ
  していたつけ

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

(2)「望ケ丘の少年少女寮跡を訪ねて」、 近藤宏一 (らい詩人集団発行『らい』第25号、1~2ページ、1980年2月発刊)

    (一) ブランコ

  誰もいない広場
  岬の端の小さな校舎
  かすかな海鳴りの底に沈んでいるのは
  遠い日の古びたオルガンの音
  ああ らい児の日のままにブランコをこぐ
  錆ついた時間をこぐ


    (二) い も 畑

  いつも爪の先に血をにじませながら
  にぶい目の色をして
  らい児はこのいも畑をひらいた
  たたかいの日、飢えた日、枯木のように大勢が死んでいった歳月
  ああ あれは夢ではなかった
  たしかな、たしかならい児たちの歴史の一齣
  いまは草茫茫の
  誰もいなくなったこの丘を
  私たちは望ケ丘といまも呼んでいる


    (三) 楠

  空を指し、枝を張り
  思い出の楠はもう見上げるばかり
  あの日竹とんぼの好きなサーちゃんが赤痢で死んだ
  丸い目をしていたあの少女は
  あの日に故郷へ帰ったまま、
  丘の上でいつまでも
  私がハーモニカを吹いたのもあの日であつた
   「○月○日
   アメリカ艦隊沖縄を砲撃……」
  重苦しいラジオの臨時ニュース
  濁った大風子油の
  いつまれも消えない注射の痛み
  あの日、みんなで植えた楠の苗木に
  私たちは何を祈ったのだろう


    (四) 夕陽の庭

  崩れはてた廃屋の庭に
  こうろぎが過ぎ去った時間をかぞている
  瓦礫の間に枝をはり
  蔓草が白い花を風にふるわせている

  ああ この丘にらい児は絶えた
  ひとつのうたが終った
  しかし私は見た
  はたしえなかった無数の幼い祈りが
  いつまでも夕陽の庭に深い影をとどめているのを

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

(3)「無 題」、 近藤宏一 (らい詩人集団発行『らい』第16号、8ページ、1969月11発刊)

  摘出された眼球の空洞に
  風が細い糸を引く。

  私は季節をなくした。

  光が
  闇のむこうで乱反射し、
  追いつめられた生命の粒子が
  無数の金の星座を編む。

  癩が私なのか、
  私が癩なのか、

     癩と私との間の
     にがいにがい生への欲求――
     蝶になる毛虫の夢――

  摘出された眼球の空洞に
  風が細い糸を引く。

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

(4)「冬 の 朝」、近藤宏一(らい詩人集団発行『らい』第20号、6ページ、1972月9発刊)

  赫土の土堤に霜柱が
  魚の骨のようにぼろぼろとくずれ落ち
  冬の朝はすすりないていますね。

  牛乳配達夫の白い息が
  昨夜の遊戯の疲れを木立ちの間にはき捨て
  冬の朝はやはりすすりないていますね。

  朝という名のけだるさが
  今日一日の重さをたずさえて来て
  僕はやっぱり
  暖めたベッドが一番恋しいのだ。

  看護婦よ
  窓から見える海面に
  真黒な濃汁が滲み出てはいないか
  天から無数の羽のしずくがこぼれ落ちてはいないか
  天も地も
  海も
  今正直の恐れおののいて
  冬の朝はやはりないていますね。

  母よ
  神よ
  あなた方は涙ぐみながら
  はるかな季節の脈搏のむこうから
  僕を見つめて
  冬の朝はやはりすすりないていますね。

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

(5)「明日への道は遠い」、近藤宏一(らい詩人集団発行『らい』第17号、5ページ、1970月4発刊)

  健やかな指と、
  なえた指とが
  一つの薔薇をさす……その角度。

  明日への道は遠い。

  肌をなくした土色の想念と、
  つぶらな少女の瞳とは
  いつまでも結ばれ得ないか。

  明日への道は遠い。

  あなたが私になり得ないように、
  私があなたになり得ないように、
  癩者と、
  非癩者との、
  鋭敏な鋭敏な拒否反応。

  個人では既にいえ、
  社会では猶いやされない。
  あゝ
  癩の鋭敏な拒否反応。
  そうして屈曲した指が
  その心のまゝの方向を指していない間に、
  薔薇は
  風の中でそのまゝ化石となる。

  明日への道は猶遠い。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 
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