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 らい詩人集団 『らい』の同人である小泉まさじさんの詩を紹介します。~『らい』編集・発行者・島田等さんを偲んで(13)

 投稿者:  滝尾 英二メール  投稿日:2008年 9月 7日(日)17時24分51秒
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 らい詩人集団発行『らい』の同人である小泉まさじさんの詩を紹介します。~『らい』編集・発行者・島田 等さんを偲んで(13)~


                  人権図書館・広島青丘文庫  滝尾英二

                     ‘08年 9月7日(日曜日) 17:25


『小泉雅二詩集』の序文は、永瀬清子さんが書いています。現代詩工房から発行された「小泉さんの詩のこと」を永瀬清子さんは「‥‥こんど亡くなられて、目がみえんようになられて書かれたものが、やつぱり小泉さんでならんというものを書いていられたと、書いていられたと、非常に私はうたれたわけです。」と愛生園での文芸講演会の講演記録で1969年11月3日に話しておられます。

 これは、らい(季刊)第17号の表2で(新刊紹介)でお書きになっています。さらに永瀬清子さんは、つぎのようにも書いておられます。

 「‥‥その中で、<誰のためにも生きないこと。誰のためにも死なないこと。ひとひとりを救おうなどと考えないこと>というようなことでも、小泉さんでなければいえないことだつたと。

 それで、愛がね、『志保子抄』に書れていられるけれど、<ほんとうに愛していないのかもしれない。自活できないのだから>といつていられるのが、ほんとうに可愛そうで……私もそういうことがいえることは、あなた方にたいして、ほんとうになにか、いうにいえないつらさを、私はそこに感じたのです。

 で、生活できないということは、みなさん方にはね、いろいろな病気の苦労以上に、つらいことになつているんじやないかと思つていたんですが、やはり小泉さんがこんなに書いてくれるとね、やはり言つてくれるとるなと思つたですね。」(昭和四四年十一月三日、愛生園での文芸講演会の講演記録から)。

 「小泉さんの詩」である『志保子抄』は、『らい』第19号;1972年5月発刊の24~25ページで、書評『志保子抄』が遠藤一夫さんは(『油紋』十六号)を紹介しています。『らい』第19号の編集・発行人は「しまだひとし(島田 等)」さんです。


 遠藤一夫さんが書かれておられる書評『志保子抄』には、つぎのような一文があります。

「‥‥志保子(非らい者)の来訪は、小泉雅二にとって、らいを識るてだてとして意味があった。処女のもつ自我球のまぶしい程の輝きにらいは陰をいっそう明確にする。らい者と非らい者との断層を相愛によって埋めようとする努力程、虚しい行為があるだろうか。少女のふくよかな未来がらい者の暗みを浮出させる。志保子は一夜の悪夢ではなかった。不存者共有の持てない希いであり祈りでもあったろう志保子をめぐるトラブル(詩作)が続く限り小泉雅二は、一握の生を確認出来たろう。そして志保子は不死身であり小泉雅二は逝った。

   病まない者たちの世界で
   病むことは異常だけれど
   病む者たちの世界では
   病まないことは異常ではない
         「らい民族の存在」

 識ることは逃げない事である。書くことは自らを裁く事である。らいがらいで在り続ける世界にひかれた矢に射たれた私である。」(部分)。



「志保子抄」小泉まさじ( 『らい』第3号、1965年3月発刊、14~15ページ掲載より)

       <1>

  霧のある日 渡し船から身軽く ぴょんと
  らい園の桟橋に飛び移つた スラックスにセーターの少女がいた

  少女はらいを知りはしなかつた

  ただ一人で瀬戸内海の 一月の寒風を断ち切つた 少女

  赤いネッカチーフの 十七才の冒険だ

  カモシカのような 少年のような強靭さがあつて 明るく ほがらかな笑いが 潮風にのつて らい園を包んだ

  少女はらいを怖がりはしなかつた

  それで らい園の若者たちは 少女の周囲に群がるつた
    語り合い 唄つた
    けれど みんな らいの本当の怖わさを知られたくはなかつた
    少女もそれは怖わかつた

  少女はうたうように一篇の詩をそらんじた
    ぼくは それがぼくの詩であることにおどろいた
    少女がそれを誰のものかとたずねたが みんな知りはしなかつた

  少女がぼくに会いたいと言うので
    ぼくは少女ののために大声でぼくをさがしてやつた
    みんなが ぼくのお道化をうれしがり
    少女は やつとぼくに気づいてはしやいだ が
    ぼくがじつとみつめたら 恥ずかしそうにきれいな十本の指で顔を覆つた

  指間から きらりと瞳が覗いていた

  ぼくの視線にはらい菌がいた
  少女の視線はそれをみた

  「わたし志保子です」と少女は戸惑の眼を笑ませて会釈した
    ぼくはぼくの躰の何処かで 凍てつく音をきいていた

  少女の会いたいと願つていた たくまし美男の詩人は不在であつた

  うろたえかくすように ぼくに笑顔をふるまいながら
  少女は 再び ぼくの詩にリズムをつけた。

       <2>

  らいを知らずにいれば らいの苦しみを知らずにすんだ

  らいは酷い
  らいは怖い
  らいは惨めすぎる
  らいは悲しい

  らいにそつぽをむけて通り過ぎればよかつた

  志保子

  他人の不幸事にかかわらなければ
  いつも苦しみを知らずにいられるだろうか
  氷のような世の中を逃げまわつてさえいれば
  幸福だろうか

  「志保子に現実を突きつける 残酷な一枚の鏡があなただ」
  「あなたにえぐられた心は 堅く閉じて 犯罪者のように惨めだ」
  「あなたを慰めようとした 志保子の優越感がきりきりとうずく」

  「あなたは夢のなかにいなければよかつたのに」
  十七才の気どりを 泣き崩した 志保子

       <3>

  昼間は働らく 高校二年生の 志保子

  春の 青空に 街路の にせあかしやの白い花びらが 一勢に飛び散ると
  宣伝カーのなかで みぞおちの深くに 海の白波をかきたてていた

  空と 海の 十七才の青さ

  らい園を訪れる志保子

  ひと月に一度はやつてきた にせあかしやの花が好きだといつた
  沢山の詩を書いて一冊だけの詩集を出したいと言い
  そんな考えは子供かしら……と言う

  ぼくに追いつき 追い越すのだ! とはしやぐ

  ――ある日 帰りの桟橋に急ぎながら
  「わたし患者さんと恋をしてはいけない?」
  と つぶやく 視線がこたえを待つていた
  「らいに苦しんでいるのは 人間だよ」
  ぼくに
  志保子はこつくりとうなずいてみせた

  志保子はぼくを鏡にした

  らいに育くまれているぼくが鏡だ

  鏡をみがいているのはらい菌だ

  らいが鏡だ

  鏡のまえでうろたえる志保子 鏡を砕け!

  桟橋を離れる船上で 斜陽にはねかえる 波――志保子。

       <4>

  着飾つた晴着に このうえもない汚物がついて 人々の眼が集まつたら
    年頃の娘でなくても 窒息しそうになつて 逃げ走つてしまうはずだ

  <らいは汚物だ――>とぼくは考えていた

  坐れずにいる 志保子とぼくの旅に 車輛の視線で 逃げ場はない
    とじた瞼に 十字架の キリストの苦悩を背負つていた志保子

  志保子が処刑されている

  罪名はなに?
  被害者はだれ?
  処刑執行人は……?
     <志保子を汚しているのはぼくだ>

  ぼくはいらだつ心で煙草をくわえる
  「もうじきに着くわ――」
  志保子が落ち着いた声でマッチをする

  車窓で 絵のような風景が次々とうしろへ倒れて
    瞬時が過去になつていた。

     ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 
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