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 「島田 等さんを偲んで」(17回) 神谷美恵子著『新版・人間をみつめて』、朝日選書第17:(1974年8月発刊)より 

 投稿者:  滝尾 英二メール  投稿日:2008年 9月12日(金)20時36分5秒
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 「島田 等さんを偲んで」(17回) 神谷美恵子著『新版・人間をみつめて』、朝日選書第17:(1974年8月発刊)より

                     人権図書館・広島青丘文庫  滝尾英二

                         ‘08年9月12日(金曜日) 22:47


 神谷美恵子『新版・人間をみつめて』(1980年1月6刷・発刊)の記載された中から、島田 等さん著の「臨床における価値の問題知識人のらい参加(その二)神谷美恵子 (『らい』第21号、1973年9月発刊) と関連している箇所を幾箇所か、紹介してみようと思います。


<資料①> ‥‥‥ところが、その後間もなく、結核にかかっていることが発見された。万事休す。家族への感染の問題を考え、ひとりで山へ行くことを願い出て、療養生活を送った。地元の夫妻が階下にいて食事を作ってくれたが、感染を恐れていたから、窓ごしに食事を出してくれるとき、簡単なあいさつを交わす程度の接触しかない。よい薬もない時代で、治るみこみはほとんどない、と主治医の寺尾殿治先生から聞かされていた。二階にじっとねたまま、本台にぶらさげた書を読む日々の心境にはまさに「死への準備」のような面があった。‥‥‥この時にめぐりあった本たちは心の奥底にしみ透り、その後の一生を支えてくれたように思う。

 たとえばマルクス・アウレリウスの『自省録』はそうした本の一つだが、彼の宇宙的視野に立ってみるとき、自分が医者になれるかなれないか、病気が治るか治らないか、などはどうでもいいことにしか思われなくなってくる。地上の一生のことは大いなる摂理にまかせておけばいいのだ、と心から思えっとき、大きな安らぎにつつまれるのであった。(134ページ)。


<資料②> 「人間を越えるもの」

  慈悲となさけと和らぎと愛とに、
  あらゆる者は苦しいとき祈り、
  これらの喜ばしい徳に
  感謝の心をささげる。
    …………………
  慈悲は人の心にやどり
  なさけは人の顔にあらわれ、
  愛はこうごうしい人の姿、
  和らぎは人のまとう着物。

  あらゆる国のあらゆる人の
  くるしい時に祈る神は
  こうごうしい人の姿をもたぬか、
  愛と慈悲となさけと和らぎの。

  人の姿を愛せねばならぬ、
  異教びと トルコびと ユダヤ人も、
  慈悲と愛となさけのすむところ、
  そこに神おわします故。

(W・ブレイク作・土居光知訳「神様の姿」、『世界文学全集』河出書房、一九六九年、一一六ページ)

 右は英国のブレイクの詩である。至高者を思い浮べるとき、人間が普遍的に抱く心をあらわしたものであろう。こうした普遍的宗教心をたいせつにしたい。

 人間はいつの世にも人間を越えるものの存在を考えてきた。自分の有限性はあまりにも明らかであり、そのことを知るだけ、人間のあたまが発達しているからである。そのことは科学が発達するに従ってますますはっきりしてきた。


<資料③> 「島との出会い ― らいの人に」

 しかし、やっぱり、私の「初めての愛」はらい(二字は傍点あり、以下同様=滝尾)であったらしい。その証拠に、卒業の一年前、つまり昭和十八年に、瀬戸内海にある国立療養所長島愛生園に十二日間ほど見学に行っている。その当時の日記の一部が本書の第Ⅱ部に入れてある。(中略)それとともに、らいの臨床にじかにたずさわって触れた患者さんたちの姿は、以前の、いわばかりそめの、観念的な出会いよりは、はるかに具体的な体験を心にきざみつけた。当時の見学日記に記してある、稚拙な詩を次に載せておこう。

        「らいの人に」

  光うしないたるまなこうつろに
  肢(あし)うしないたるからだになわれて
  診察台(だい)の上にどさりとのせられた人よ
  私はあなたの前にこうべをたれる

  あなたはだまっている
  かすかにほほえんでさえいる
  ああ しかし その沈黙は ほほえみは
  長い戦いの後にかちとられたものだ

  運命とすれすれに生きているあなたよ
  のがれようとて放さぬその鉄の手に
  朝も昼も夜もつかまえられて
  十年、二十年、と生きてきたあなたよ

  なぜ私たちでなくてあなたが?
  あなたは代って下さったのだ
  代って人としてあらゆるものを奪われ
  地獄の責苦(せめく)を悩みぬいて下さったのだ

  ゆるして下さい らいの人よ
  浅く、かろく、生の海の面(おも)に浮びただよい
  そこはかとなく 神だの霊魂だのと
  きこえよいことばをあやつる私たちを

  ことばもなくこうべたれれば
  あなたはただだなっている
  そしていたましくも歪められた面に
  かすかなほほえみさえ浮べている。

 いかにもセンチメンタルで気はずかしいが、当時の愛生園の状況は、たしかに地獄を連想させるものがあった。まだらいの治療法もほとんどなく、戦時中のこととて、二千人余の患者さんたちは栄養失調である上、むりな畑しごとをしなければならなかった。らいは悪化の一路をたどり、ほとんど毎日のように死亡者が出た。 (137~139ページ)。


<資料④> 「うつわの歌」~人間がみな「愛へのかわき」を持っていること~

 「人間を越えるもの」が宇宙全体を支えるものだとすれば、そのものから人間に注がれる「配慮」を、「愛」とか「慈悲」とか人間的なことばで表現するのも、ずいぶんこれを矮小化したことかもしれない。しかし人間はほかにことばを知らないのだ。ということは、ほんとうにはその実体が私たちにはごくおぼろにしかわからない、ということを意味する。その認識能力が、私たちのあたまには、まったくそなわっていないのだ。

 しかし、まぎれもないことは、人間がみな「愛へのかわき」を持っていることである。その大いなる実体がわからないにせよ、人間を越えたものの絶対的な愛を信じることが、このかわきをみたすのに十分であることを、昔から古今東西の多くの偉大な人や無名な人びとが証明してきた。このかわきがみたされてこそ、初めて人間の心はいのちにみたされ、それが外にもあふれ出ずにはおかない。そのことをある人は歌った。題して「うつわの歌」という。

  私はうつわ
  愛をうけるための。
  うつわはまるで腐れ木だ、
  いつこわれるか わからない。

  でも愛はいのちの水
  大いなる泉のものだから。
  あとからあとから湧き出でて
  つきることもない。

  愛は降りつづける
  時には春雨のように
  時には夕立のように
  どの日にもやむことはない。

    ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

  うつわはじきに溢れてしまう
  そしてまわりにこぼれて行く
  こぼれてどこへ行くのだろう。
  ――そんなこと、私は知らない。

  私はうつわ
  愛をうけるための。
  私はただのうつわ、
  いつもうけるだけ。

 これを歌った人は、人の忌みきらう病をわずらい、一般社会から疎外されてもいた。それでもなお、この人には、いきいきしたものがあふれていた。私はそれをこの眼でみたから、うたがうことはできない。
                          (同書 116~118ページ)


<資料⑤> 「看護婦 ― 女性の良さはまさにここにある」

 一九五九年七月十九日
 看護婦 ― それもまだうら若く、ほっおりした、未熟なくだもののような看護婦が、あの海千山千の、ふてくされたAを世話する姿。泣いて拒絶する彼女をなだめすかして、一口でも食べさせようとする姿をみて考えた。女性の良さはまさにここにある、と。本能的とでも言いたいようなやさしさ。看護婦の姿に私はいつも感動する。女性の持っている善いものの精髄(エッセンス)がそこに現れていると思う。
                           (同書 214ページ)


<資料⑥> 「ただの人間、ただの求道者」 神谷美恵子

 ‥‥‥「これは君の宿命だ」とN(夫=滝尾)はおどけたように言った。この理解のありがたさ。こうして皆から自分をむしりとるようにして、けさ早く、いつものように、ひとり出てきた。

  まっくらな道には
  もう春のやわらかい風が流れている。
  その流れに乗って
  べつの世界にすべり出る。
  だれもいない駅に
  ひとり腰かけて光をあび
  闇をみすえている者。
  それは女でもなく男でもない。
  主婦でも教師でも医師でもない。
  ただの人間、ただの求道者
  たえず別の世界にすべり出て
  人間を、人生を、世界を
  もう一度みつめ直そうとする
  一個の人間にすぎないのだ。
                              (同書 231ページ)

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

*予告* 次回の「島田 等さんを偲んで(18回)は、連載 私の履歴書(一二) きき書き しまだ ひとし 「ノ ン」(らいでないらい)を掲載します。らい詩人集団『らい』24号=1979年4月発行に掲載された文章です。長文ですので、何回に分けて掲載します。(滝尾)

 
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